真夜中のレビュー (ミステリー小説)

真夜中のレビュー

「あの動画、見た？」

夕暮れの薄暗がりの中、玲子は友人の美咲にそう呟いた。美咲はスマホをいじりながら、「うん、見たよ。あのYouTuber、結局、プラットフォームの案件だったんだってね」と答えた。

二人が話していたのは、人気YouTuber、蒼井夕希が投稿した動画のことだった。夕希は、最近話題の海外通販サイト、「グローバルモール」から120万円の案件を受け、商品を絶賛する動画をアップしていた。

「でも、よく考えたら、あんなにいいわけないじゃん。だって、あの値段で」

玲子はため息をついた。美咲も頷き、「私もそう思った。あんなに安くて良質な商品なんて、ありえないよ」と同意した。

「それに、あの動画、なんか変だったよね。いつもみたいに、商品の欠点とかは一切触れてなかったし」

玲子は、夕希の動画に違和感を感じていた。彼女はいつも、商品の良いところだけでなく、悪いところも正直にレビューしていた。しかし、今回の動画では、グローバルモールの商品をことさら褒めちぎっていたのだ。

「もしかして、本当に良いものなのかもしれないけど、なんか、裏がある気がする」

美咲の言葉に、玲子はゾッとした。二人は、グローバルモールの商品について調べることにした。

ネットの情報によると、グローバルモールは、確かに安い商品を扱っているものの、品質にはばらつきがあり、中には粗悪品も含まれているという噂があった。さらに、配送の遅延や、商品が届かないといったトラブルも発生しているという情報もあった。

「やっぱり、あの動画は怪しいわ」

玲子は確信した。夕希は、グローバルモールから多額の報酬を受け取り、商品の欠点を隠していたのではないだろうか。

二人は、夕希の動画をもう一度見直してみた。今度は、以前とは違う視点で。すると、夕希の言葉の中に、隠されたメッセージを見つけた。

「この商品は、本当に素晴らしい品質です」

夕希はそう言いながら、商品を手に取る際に、わずかに震えていた。そして、商品の説明をする際に、普段とは異なる言い回しを使っていた。

「もしかして、彼女は脅されているのかもしれない」

玲子は冷や汗をかいた。美咲も、玲子の顔を見て、その可能性に気づいた。

「でも、どうすればいいの？」

美咲は不安そうに言った。二人は、夕希の動画をネタに、グローバルモールの闇を暴こうと決意した。

二人は、グローバルモールの商品を自腹で購入し、実際に使ってみることにした。すると、予想通り、商品には様々な問題点が見つかった。

「やっぱり、安かろう悪かろうだわ」

玲子はため息をついた。

そして、二人は、グローバルモールと夕希の関係について、さらに深く調べることにした。

その結果、二人は驚くべき事実を知る。それは、グローバルモールが、夕希だけでなく、多くのYouTuberに、商品を宣伝する対価として、巨額の報酬を渡していたという事実だった。

「これは、単なる商品のレビューじゃないわ。犯罪よ」

玲子は怒りを抑えきれなかった。二人は、夕希を助け、グローバルモールの闇を世に知らしめることを決意した。

「でも、どうやって？」

美咲は不安そうだった。

「大丈夫。私たちは、真実を暴く。そして、夕希を救う」

玲子は、自信に満ちた表情で言った。

二人は、グローバルモールの悪事を暴くための戦いを開始した。その戦いは、二人を危険な世界へと導いていくことになる。

「これは、単なるレビューじゃない。これは、サバイバルよ」

玲子は、夜の帳が下りる中、静かにそう呟いた。