君と、あの夏の終わり
「おい、翔太、聞いてくれよ！」
陽介は、汗ばんだ顔をタオルで拭きながら、そう言った。
「なんだよ、急に。」
翔太は、いつものように公園のベンチに座り、ジュースを飲んでいた。
「あのさ、親父がさ、昨日死んだんだ。」
陽介は、顔をしかめて言った。
「え、マジ？」
翔太は、ジュースを一口飲むのを止めて、驚いた顔を見せた。
「うん。急だったんだ。心臓発作らしい。」
陽介は、うつむき加減に言った。
「ご冥福をお祈りします。」
翔太は、そう言って言葉を失った。
「でもさ、お葬式のこと考えると、マジ鬱なんだよね。」
陽介は、ため息をついた。
「親父のことだから、派手な葬式を望むだろうし、親戚もいっぱい来るだろうし、お金もかかるだろうし…。」
「あー、わかる。俺も親父が死んだら、そんな感じだろうなぁ。」
翔太は、少し遠い目をして言った。
「それに、親父と最後に会ったのは、いつだったか覚えてないんだよね。」
陽介は、暗い表情で言った。
「あれは、確か…」
翔太は、陽介の言葉を遮って、思い出したように言った。
「あの時、俺たち、一緒に海に行ったよね？ あの日の夕焼け、綺麗だったなぁ。」
「ああ、懐かしいな。」
陽介は、少しだけ笑顔を見せた。
「あの時、親父は、俺に『お前は、将来何をしたいんだ？』って聞いてきたんだ。」
「そうだったな。」
「その時は、何も答えられなかったけど…。」
陽介は、再び暗い表情に戻った。
「今なら、答えられる気がするんだけど…。」
「何をしたいんだ？」
翔太は、陽介の目を見つめて尋ねた。
「…君と一緒に、青春したい。」
陽介は、少しだけ顔を赤らめて、そう言った。
「…は？」
翔太は、陽介の言葉に、戸惑った。
「だって、君といると、楽しいんだもん。一緒にバカやって、笑って、泣いて…。」
陽介は、顔を真っ赤にして、そう言った。
「…俺も、君といると、楽しいよ。」
翔太は、少しだけ照れながら、そう答えた。
「じゃあ、約束しよう。二人で、最高の青春をしよう。」
陽介は、そう言って、翔太に手を差し出した。
「…うん。」
翔太は、陽介の手を握り返した。
二人は、公園のベンチに座り、夕暮れ時まで、青春について語り合った。
「あのさ、親父のことだけど…。」
陽介は、少しだけ躊躇して、そう言った。
「別に、派手な葬式にしなくてもいいんじゃないかな？ 」
「…え？」
翔太は、驚いた顔を見せた。
「親父も、きっと、シンプルで温かい葬式を望んでると思うんだ。それに、お金も、そんなにかけなくていい。だって、大切なのは、親父の思い出をみんなで共有することじゃん？ 」
陽介は、まっすぐな目で、そう言った。
「…そうだね。」
翔太は、陽介の言葉に、納得した。
「じゃあ、二人で、親父の思い出をいっぱい語り合おう。」
陽介は、そう言って、翔太の肩に手を置いた。
「うん。」
翔太は、陽介の肩に手を置き返した。
二人は、夕暮れの公園で、親父の思い出話に花を咲かせた。
その夜、陽介は、親父のことを、今まで以上に深く理解できた気がした。
そして、翔太と二人で過ごす、この時間が、自分にとって、かけがえのないものだと気づいた。
親父を失った悲しみは、消えることはない。
しかし、翔太との出会いによって、陽介は、再び前を向いて歩き出すことができた。
二人で、親父の思い出を胸に、新しい未来に向かって進んでいく。
それは、君と、あの夏の終わりに始まった、彼らの青春の物語だった。
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- News検索単語: 金言: 「塵も積もれば山となる」
- 小説のジャンル: 青春小説