血染めの月影 (幻想小説)

血染めの月影

第一章：沈黙の祭壇

血染めの月は、深い紅色の光を放ち、黒曜石のように光る湖面を血のように染めていた。湖畔には、古びた石造りの教会がそびえ立ち、その門扉は、まるで巨大な口のように大きく開かれていた。

教会の内部は、薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。祭壇には、無数のろうそくが灯され、その炎は、不気味な影を壁に落としていた。祭壇の中央には、白く輝く石棺が置かれており、その上に、黒曜石のような光を放つ奇妙な球体が置かれていた。

この教会に足を踏み入れたのは、旅の途中で出会った、謎めいた男、“鴉"と名乗る男だった。鴉は、教会の奥深くへと進んでいき、祭壇に近づいた。そして、彼は、球体を手に取った。

その瞬間、教会全体が震え、ろうそくの炎が激しく揺らめいた。球体は、鴉の手の中で光を増し、その輝きは、血染めの月を凌駕するほど強くなっていった。

鴉は、その光に目を奪われ、何も言えなかった。彼の意識は、どこかに吸い込まれるように、薄れていった。

第二章：黒曜の夢

鴉は、夢の中にいた。それは、血染めの月が輝く、奇妙な世界だった。

そこは、巨大な森が広がり、その森は、黒曜石のように光る樹木で構成されていた。樹木の間からは、奇妙な生物が顔を出していた。それらは、まるで人間の姿をした、しかし、その目は真っ黒で、口は裂けており、鋭い牙が並んでいた。

鴉は、それらに追いかけられ、逃げ惑っていた。彼は、自分自身が血まみれになっていくのが分かった。そして、彼は、その森の中で、奇妙な女性に出会った。

その女性は、美しい顔立ちをしていたが、彼女の目は真っ黒で、鴉の目をじっと見つめていた。彼女は、鴉に語りかけた。

「あなたは、ここで失われた記憶を取り戻すでしょう。そして、あなたは、この世界の真実を知るでしょう。」

鴉は、その言葉を理解できず、困惑していた。

第三章：血の儀式

鴉は、夢から覚めた。彼は、再び、教会の中にいた。しかし、教会は、以前とは変わっていた。

祭壇には、奇妙な模様が描かれていた。それは、血で描かれた、複雑な図形だった。そして、祭壇の中央には、大きな血溜まりができていた。

血溜まりの中央には、鴉が見た夢の中の女性が立っていた。彼女は、鴉に語りかけた。

「あなたは、この血の儀式に選ばれた者です。あなたは、この世界の真実を知るでしょう。そして、あなたは、この世界の運命を変えるでしょう。」

鴉は、女性の手を握り、その言葉に耳を傾けた。彼は、彼女を信じるように、そう感じていた。

鴉は、女性に従い、血の儀式に参加した。彼は、血溜まりの中に飛び込み、女性の言葉を復唱した。

「私は、この世界の真実を知りたい。私は、この世界の運命を変えたい。」

その瞬間、教会全体が揺れ、血染めの月が真っ暗闇に呑み込まれた。鴉は、自分の体が光に包まれ、意識を失った。

第四章：真実の光

鴉は、目覚めた。彼は、教会の外にいた。教会は、跡形もなく消えていた。

鴉は、空を見上げた。血染めの月は、再び輝いていた。しかし、それは、以前とは違う色をしていた。それは、薄く、白い光を放っていた。

鴉は、自分の手を見た。彼の手に、黒曜石のような球体が握られていた。球体は、白い光を放ち、その光は、鴉の心を満たしていった。

鴉は、自分が、この世界の真実を知ったことを確信した。彼は、この世界の運命を変えるために、新たな旅に出ることを決意した。

鴉は、血染めの月が照らす、未知の世界へと歩み出した。彼の旅は、今、始まったばかりだった。