敗北の季節 (青春小説)

敗北の季節

「終わった…」

翔太は、手のひらに握りしめた紙切れを見つめながら、呟いた。それは、高校入試の結果だった。見慣れた自分の名前の下には、赤字で「不合格」の文字が大きく記されていた。

「なんで…なんで…」

翔太は、これまでの人生で初めて味わう挫折感に打ちのめされた。中学時代、彼は生徒会長を務め、成績も常にトップクラス。将来は医者になることを夢見て、日々努力を重ねてきた。だが、結果は残酷だった。

彼の夢は、一瞬にして崩れ落ちた。

「翔太、大丈夫？」

心配そうに声をかけたのは、幼馴染みの彩香だった。彼女は、翔太と同じ高校を目指していたが、見事合格を果たしていた。いつも笑顔の彩香も、翔太の落ち込み様を見て、表情を曇らせている。

「…ごめん、彩香。期待させてしまって」

「そんなことないよ。翔太なら、きっと大丈夫。まだ、道はたくさんあるよ」

彩香は、翔太の手をぎゅっと握った。

「でも…俺は、もう何もできない気がするんだ」

翔太は、絶望感に押し潰されそうだった。

「そんなことないよ。翔太は、すごく頑張ってきた。これからだって、きっと…」

彩香の言葉は、翔太の心を少しだけ慰めた。

「…ありがとう、彩香。でも、もう何もしたくない…」

翔太は、言葉を詰まらせた。

「わかった。今はゆっくり休んで。明日からまた、一緒に頑張ろう」

彩香は、そう言って、翔太の肩をそっと抱き寄せた。

翔太は、彩香の温かい優しさに包まれながら、静かに涙を流した。

「大丈夫、翔太。君なら、きっと乗り越えられるよ」

彩香の言葉が、彼の心に響いた。

「…うん、頑張るよ」

翔太は、再び前を向く決意をした。

敗北の季節は、翔太にとって、新たな始まりの季節でもあった。

彼は、この経験を糧に、更なる高みを目指していく。

「彩香、ありがとう。そして、これからも一緒に頑張ろう」

翔太は、彩香にそう告げ、力強く頷いた。

二人は、再び夢に向かって歩き出す。

彼らの未来は、まだ始まったばかりだ。