はるの願い
「なんで、あたしは『あおい』じゃないの?」
春は、いつもそう思っていた。
春は、お母さんと一緒に暮らしていた。お母さんの名前は、あおい。そして、春のお父さんの名前は、ひろし。
春は、お母さんの「あおい」という名前が好きだった。優しい響きで、春の心もふんわりと包み込むような、そんな名前だった。
でも、春の名前は「はる」。お父さんの「ひろし」から一文字もらった名前だった。
「なんで、あたしは『あおい』じゃないの?」
春は、何度もそう思った。
ある日、春は、おばあちゃんにその疑問をぶつけた。
「おばあちゃん、なんであたしは『あおい』じゃないの?お母さんの名前なのに。」
おばあちゃんは、春の手を優しく握りしめながら言った。
「それはね、昔からのしきたりっていうものがあってね。結婚したら、みんな女の人は男の人と同じ姓になるの。だから、お母さんもお父さんの『ひろし』から『はる』になったのよ。」
「でも、なんで?」春は納得できない。
「昔は、男の人の方が家族の代表だったのよ。だから、女の人は男の人と同じ姓になって、家族の一員だってことを示していたの。」
「でも、お母さんは『あおい』がいいって言ってたよ。」
「そうね、でも昔は、お母さんもそう言うのは難しかったのよ。」
おばあちゃんは、春の目を見つめて言った。
「でも、今は時代が変わってきているのよ。みんなが昔と同じように考えなくてもいい時代になってきたの。だから、あなたも、将来、結婚しても、自分の好きな名前でいられるかもしれないわ。」
春の心は、少しだけ明るくなった。
「おばあちゃん、あたしは『あおい』でいたい。」
「そうね、あなたの願いは、きっと叶うわ。」
おばあちゃんは、春に微笑んだ。
春は、おばあちゃんの言葉を胸に、未来への希望を感じた。
「あたしは、いつか、自分の好きな名前で生きられる。」
春は、そう決心した。
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- 小説のジャンル: 児童文学