「色彩の魔法」 (恋愛小説)

「色彩の魔法」

「来週の土曜日に、虎ノ門の美術館で写真展があるんだけど、一緒に行かない？」

麗は、いつものように週末の予定を相談しようと、翔太に電話をした。

「写真展？何の写真？」

「ソール・ライターっていう、有名な写真家の作品なんだって。色彩がすごく綺麗で、写真なのに絵画みたいなんだって！」

翔太は、麗の熱意に少しだけ興味を持った。普段は美術館には縁がない彼だったが、麗の言葉に誘われるように、二つ返事で承諾した。

美術館に着くと、そこには想像をはるかに超える光景が広がっていた。

「わあ、すごい！」

麗は、色とりどりの写真に目を輝かせた。

街角のスナップ写真、ポートレート、風景写真。どれも、色彩が鮮やかで、まるで魔法がかかったようだった。

特に、二人の目を引いたのは、夕暮れの街並みを写した一枚の写真だった。

オレンジ色の夕焼けが、街の建物を染め上げ、まるで燃えているようだった。

「この写真、すごいよね。夕焼けの色が、すごく綺麗で、切ない感じがする」

麗は、写真の前で息を呑んだ。

翔太も、写真に見入っていた。

「確かに、すごく綺麗だな。でも、切ないって、どういう意味？」

「夕焼けって、一日が終わる時間じゃん。だから、少し寂しい気持ちになるんだと思う。」

翔太は、麗の言葉に納得した。

二人で、写真展をゆっくりと鑑賞した。

普段はクールな翔太も、麗の隣では、少しだけ子供に戻ったように、楽しそうに写真を眺めていた。

「この写真展、本当に来てよかったね」

麗は、満足そうに言った。

翔太も、うなずいた。

「うん、来てよかった。色彩の魔法って、本当にすごいな」

美術館を出ると、すでに日は沈んでいた。

街の灯りが、煌煌と輝き、二人の足元を照らしていた。

「翔太、またどこか一緒に行こうね」

麗は、そう言って、翔太の腕に軽く手を触れた。

翔太は、麗の笑顔に、思わずドキッとした。

「ああ、もちろんだ」

翔太は、麗の手をそっと握り返した。

二人は、色彩の魔法に導かれるように、夜の街へと消えていった。