夕焼けの猫背負い

第一章　血染めの夕日

室町時代の古都、京都。夕焼けが町並みを朱に染める中、少年・空汰（くうた）は数匹の猫を背中に乗せ、疾走していた。彼の背中は、まるで動く猫の絨毯。柔らかな毛並みが風になびき、夕日に輝く塵が舞い上がる。しかし、その美しい光景とは裏腹に、空汰の顔には、年齢不相応の重苦しさが漂っていた。

彼は、町外れにある廃寺を目指していた。その廃寺は、近頃「猫の墓場」と呼ばれ、子供たちの間では近寄るのも恐れる場所だった。空汰は、その「猫の墓場」に、ある秘密を隠していた。

廃寺の境内には、無数の猫の死骸が散乱していた。その多くは、首を絞められた痕があった。そして、一番奥の、崩れかけた本堂の前に、一匹の猫がいた。白い毛並みの美しい猫で、首には、鮮やかな紅色の絹の紐が巻かれていた。その紐は、明らかに、生きたまま絞められたことを示唆していた。

空汰は、猫の傍らに、小さな木箱を置いた。中には、一枚の血染めの布切れが入っていた。それは、空汰が先程まで背中に乗せていた猫の一匹、黒猫・クロの腹部に刺さっていた刃物から採取したものだった。

「クロ…許してくれ…」

空汰は、絞り出すように呟くと、静かに跪き、夕日に染まる猫の死骸を見つめた。

第二章　猫の証言

翌日、町奉行所の与力、伊庭十蔵は、廃寺で発見された猫の死骸の調査を命じられた。十蔵は、空汰が猫を背負って走り去る姿を目撃したという証言を得る。空汰は、猫と深く関わっていることで知られていたが、十蔵は、その理由を全く知らなかった。

十蔵は、空汰の家に赴いた。そこは、古びた長屋で、多くの猫が自由に暮らしていた。しかし、空汰は、十蔵の問いかけに、ほとんど言葉を返さなかった。ただ、彼の瞳には、深い悲しみと、何かを隠蔽しようとする強い意志が宿っていた。

十蔵は、廃寺で発見された血染めの布切れと、クロの死体から採取した毛を調べさせた。布切れには、高価な染料が使われており、その染料は、京都の有力な商人、紀伊家の家紋に使われているものと一致した。

第三章　絹の糸の謎

紀伊家は、代々、絹織物で財を成した名家だった。十蔵は、紀伊家に潜入捜査を試みた。そこで、彼は、紀伊家の当主が、密かに猫を殺し、その血で染めた絹を織らせているという恐ろしい事実を突き止めた。

その目的は、呪いの儀式。猫の血で染めた絹は、莫大な富をもたらすという言い伝えがあったのだ。そして、クロの首に巻かれていた赤い絹の紐は、その儀式に使われたものだった。

第四章　少年の決意

十蔵は、空汰が、紀伊家の陰謀を暴こうとしていたことを悟った。空汰は、クロを含む猫たちを通じて、その陰謀を感知し、証拠を収集していたのだ。彼の背中に乗っていた猫たちは、単なるペットではなく、彼の仲間、そして事件解決のキーとなっていた。

空汰は、十蔵に、全てを告白した。彼は、幼い頃に紀伊家の陰謀を目撃し、以来、猫たちと共に、証拠を集め、その事実を世に知らしめようとしていたのだ。

最終章　夕焼けの鎮魂歌

十蔵は、空汰の証言と証拠に基づき、紀伊家を逮捕した。夕焼けが町を染める中、空汰は、廃寺の猫たちの墓前に、クロと共に、静かに祈りを捧げた。彼の背中には、残された猫たちが寄り添っていた。夕焼けは、再び、穏やかな光を町に注いだ。

この物語は、あくまで一つの例です。ここから様々な展開や謎を追加して、より複雑で魅力的なミステリー小説にすることができます。例えば、猫が特別な能力を持っている、空汰に隠された過去がある、など。

夕焼けの猫背負い#