影武者と月の紋章
織田信長への密書作成を依頼された影武者、**真尋（まひろ）**は、冷や汗が止まらなかった。依頼主は、名を伏せたまま、月の紋章が刻まれた奇妙な水晶玉を届けていた。その玉が、遠隔地からの暗号化された指示を送信する端末だと告げられたのだ。
真尋は、信長に瓜二つと言われる容姿を持つ、辺境の村でひっそりと暮らしていた若者だった。しかし、その容姿ゆえに、この危険な任務に巻き込まれた。密書の内容は、信長の死を偽装するための複雑な策略に関わるものだと察し、背筋に冷たい風が吹き抜けるのを感じた。
水晶玉は、時折、柔らかな青白い光を放ち、内部には、星屑のようにきらめく文字が浮かび上がる。それは、古代魔法の言語、ルーン文字だった。真尋は、その言語を解読できる専門家、エルドラという老婆の助けを借りていた。エルドラは、水晶玉から発せられる魔力に反応し、時に激しく咳き込みながら、ゆっくりとルーン文字を解読していく。
「…三日後、酉の刻… 黒曜石の指輪… 鳳凰の羽根… そして… グリモア…」
エルドラの唇は青ざめていた。グリモア。それは、禁断の魔法書の名だった。その存在は、歴史の闇に葬られ、誰もがその危険性を恐れていた。信長の死を偽装する計画に、一体なぜ禁断の魔法書が必要なのか？ 真尋は、ますます混乱に陥った。
水晶玉からの指示は断片的で、まるでパズルを解くように、少しずつ明かされていく。そして、そのパズルが完成した時、真尋は恐るべき陰謀に巻き込まれていることに気づく。それは、信長暗殺を企む者たちだけでなく、はるかに大きな力、古代の魔力と、その魔力に操られる者たちの陰謀だった。
月の紋章、ルーン文字、禁断の魔法書グリモア… 全てが絡み合い、真尋は、ただ信長の影武者として働くだけでなく、運命の歯車に巻き込まれていく。彼は、この暗号化された指示に従うべきか、それとも、この陰謀を阻止するために、自らの道を切り開くべきか。冷や汗は止まらず、真尋は、満月の夜、運命の選択を迫られることになる。
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- 小説のジャンル: ファンタジー