マンモスの牙の同人誌 (ミステリー小説)

マンモスの牙の同人誌

紀元前3万5千年。ヨーロッパのどこかの洞窟。壁画に彩られた薄暗い空間で、事件は起きた。

被害者は、グルグ。この洞窟に住むクロマニョン人の一人だ。死因は頭部への打撃。凶器は、近くで見つかった鋭利に研磨されたマンモスの牙の破片と思われた。

グルグの遺体の傍らには、奇妙なものが落ちていた。マンモスの牙に丁寧に刻まれた、小さな板状の物体。それは現代で言うところの同人誌…と言えるかもしれない。原始的な線画で描かれたのは、人間とマンモスが奇妙な儀式を執り行う姿。明らかにこの時代の常識を逸脱した、異様な内容だった。

捜査に乗り出したのは、部族の長老であり、洞窟のシャーマンでもある、 wise old ウルク。彼は鋭い洞察力と豊富な知識で、部族の揉め事を解決してきた。

ウルクは、洞窟の住人たちを一人ずつ尋問していく。

「グルグを見たのは最後いつだ？」

狩猟仲間のドルフは、狩りに出かける前にグルグが洞窟の奥で何かを彫っているのを見た、と証言した。

若い女性ミーナは、グルグが最近奇妙な言動をしていたと語った。「彼は『真のサブカル』とか言って、マンモスの牙で作った小さな板をみんなに見せようとしていたんです。でも、誰も理解できなくて…。」ミーナは怯えた様子で、小さな声で付け加えた。「グルグは…荒木村重って名乗ってました。」

荒木村重…ウルクは眉をひそめた。その名前は聞いたことがなかった。一体どこから来た何者なのか？

洞窟の壁には、グルグが描いたと思われる、同人誌と似たような奇妙な線画がいくつも発見された。それらはまるで暗号のように、謎めいたメッセージを発しているようだった。ウルクは、これらの線画が事件の鍵を握っていると直感した。

ウルクは、線画の意味を解読しようと試みる。マンモスと人間の奇妙な関係、儀式の様子、そして繰り返される謎の記号…。

そして、ついにウルクは真相に辿り着く。同人誌に描かれていたのは、単なる空想の産物ではなかった。それは、グルグが偶然発見した、古代の儀式を再現しようとする試みだったのだ。そして、その儀式がグルグの命を奪ったのだった。

犯人は、グルグ自身。彼は古代の儀式の力を制御できず、自ら命を落としてしまったのだ。グルグが「荒木村重」と名乗っていたのは、儀式の中で神に選ばれた特別な存在という意味だった。

ウルクは、マンモスの牙の同人誌を手に、静かに呟いた。「グルグ…お前はあまりにも深淵を覗き込みすぎた…。」

事件は解決した。しかし、ウルクの胸には、深い謎が残った。グルグはどこで古代の儀式を知ったのか？そして、その儀式は一体何だったのか？マンモスの牙の同人誌は、今もなお、古代の謎を秘めたまま、洞窟の奥深くで眠り続けている。