転生したらモスルで税金滞納猫だった件 (転生系)

転生したらモスルで税金滞納猫だった件

前世の記憶が蘇ったのは、埃っぽいモスル市街の路地裏だった。耳をつんざくような銃声の残響が、崩れ落ちた建物の間を縫うように響く。そして、俺は三匹の猫のうちの１匹、茶トラのオス猫になっていた。

「おい、ミケ。クロ。」

かすれた声が出た。俺の名は、どうやらミケらしい。

「にゃあ？（なんだよ、チャトラ）」

黒猫のクロが、不機嫌そうに返事する。もう一匹、白黒のぶち猫のミケは、瓦礫の山に顔をうずめている。

前世はごく普通の日本人会社員だった。ブラック企業に勤めて過労死した記憶が、脳裏をよぎる。まさか猫に転生するとは…。それも、こんな場所で。

「税金、払わなきゃいけねぇんだよ」

「にゃあ？（税金？）」

クロは俺を訝しげに見る。ぶち猫ミケは、相変わらず瓦礫に夢中だ。

「ああ、税金だ。俺たち、モスル市に住民税を滞納してるらしい」

この世界の記憶が断片的に蘇る。俺たち三匹は、かつてこの街で裕福な商人の飼い猫だった。だが、紛争で商人は行方不明になり、取り残された俺たちはいつの間にか野良猫に。そして、商人名義の住民税が、猫である俺たちに引き継がれてしまったのだ。

「にゃあ！（そんなの知らない！）」

クロは怒り出した。ぶち猫ミケもようやく顔を上げ、「にゃーん（めんどくさい）」と呟く。

「だが、払わなきゃいけないらしい。でないと、この街から出ていけないんだ」

崩れ落ちた市庁舎の影から、巨大なネズミの徴税官が現れた。鋭い歯を光らせ、俺たちを睨みつける。

「貴様ら、税金を滞納しているな。今すぐ支払え！」

ネズミの徴税官の声は、不気味に響いた。逃げることもできない。廃墟と化したモスルは、まさに巨大な牢獄だ。

「どうする、ミケ、クロ…」

俺は不安げに呟いた。前世の知識が、この状況で役に立つとは思えない。税金滞納で捕まった経験もない。

「にゃあ…（戦うしかないか）」

クロは覚悟を決めたように言った。ぶち猫ミケも、渋々頷いている。

こうして、前世では過労死しただけの俺の人生第二幕、モスルで税金滞納猫として生きる戦いが、幕を開けたのだった。果たして、俺たちは無事に税金を払い、この廃墟の街から脱出できるのだろうか…。