転生したらルディヤーナーの猫だった件 (転生系)

転生したらルディヤーナーの猫だった件

前世でブラック企業に勤め、過労死した俺。次に目覚めたら、なんと中世ルディヤーナーの猫になっていた。

名前は……ない。というか、この世界の猫には個別の名前という概念がないらしい。皆、「ニャー」とか「ミャー」とか呼ばれている。まあ、前世の名前を思い出そうとしたところで、猫語しか喋れないので自己紹介もできないんだけど。

この世界、ルディヤーナーは活気あふれる交易都市だが、衛生状態は劣悪。ネズミがそこらじゅうを走り回り、疫病の温床となっている。そして、そんなネズミを駆逐する重要な役割を担っているのが、我々猫なのだ。

俺は前世の記憶と知識を保持したまま転生しており、猫の身体能力の高さに驚愕した。鋭い爪、しなやかな筋肉、驚異的な跳躍力。まさに生まれながらのハンター。前世のデスクワークで凝り固まった身体とは大違いだ。

最初は戸惑ったが、すぐに猫としての生活に適応していった。本能に従い、ネズミを狩る。これが意外と楽しい。レーザーポインターにじゃれるような感覚で、ネズミを追いかけ、捕らえ、仕留める。前世のストレスが吹き飛ぶようだ。

街の人間からは、ネズミ捕獲の名手として崇められているらしい。時々、魚のアラやミルクをもらえる。前世で残業続きだった俺にとって、この待遇はまさに天国。

しかし、猫の世界にも危険は存在する。野犬や、猫を毛皮のために狙う人間。時には、魔女の使い魔と疑われ、迫害されることもある。前世の知識と経験を活かし、危険を回避しながら、このルディヤーナーで生き抜いていく。

前世では、社畜として無為に過ごした人生。だけど、今世では、ルディヤーナーの衛生を守る砦として、猫として、精一杯生きていく。もしかしたら、この世界で、真の幸せを見つけられるかもしれない。

そして、時々、前世の記憶が蘇る度に、空を見上げて思う。

「ブラック企業より、猫の方がマシだな……」と。