時をこえる恋文
愛媛の地に息づく古木の精霊、アオギリは、数百年もの時を生きてきた。その長い生涯の中で、アオギリはただひとつの願いを抱いていた――かつて、この地に生きた老翁、源次が書き遺した恋文を、その愛しき人、時枝へと届けることだ。
源次は、時枝への想いを綴った手紙を、特別なインクで、特別な紙に書き記した。そのインクは、アオギリの樹液から作られ、紙は、時枝が愛した月夜の光を織り込んだ、不思議な輝きを持つものだった。手紙には、源次の生涯が、そして彼の変わらぬ愛が、静かに、しかし力強く記されていた。 しかし、源次は時枝に届けることなく、この世を去ってしまった。
アオギリは、源次の魂のささやきを聞き、その恋文を受け継いだ。それは、ただの紙切れではなく、源次の想いが宿った、魔法のアイテムだった。アオギリは、恋文に宿る想いの力を感じ、時枝を探し始めた。
しかし、時枝は、時の流れに呑まれ、どこにいるのか分からなかった。アオギリは、森の精霊たちや、風の妖精たち、さらには、時間そのものを操ると言われる月影の魔女に協力を求めた。月影の魔女は、古びた魔法の羅針盤をアオギリに与えた。「この羅針盤は、失われた魂の居場所を示すだろう」と、魔女は告げた。
羅針盤は、かすかな光を放ち、アオギリを導いていく。それは、時空を超える旅だった。アオギリは、過去の世界、未来の世界、そして異なる次元へと渡り歩き、幾多の困難を乗り越えていく。途上で出会う精霊たちや、不思議な生き物たちから、源次と時枝の物語の一端を聞き出し、彼らの愛の深さを改めて知ることになる。
やがて、羅針盤は、一つの場所に導き着いた。それは、現代の愛媛、静かな湖畔の小さな村だった。そこで、アオギリは、時枝の魂の片鱗に出会う。それは、村に住む一人の若い女性、美咲の中に宿っていたのだ。美咲は、源次の恋文と瓜二つな、古びた絵画を所持していた。
アオギリは、美咲に源次の恋文を伝え、その純粋な愛の物語を語り聞かせた。美咲は、涙を流しながら、その物語に聞き入った。そして、彼女は、源次の魂と、かつての愛媛の風景と、時を超えて紡がれる愛の奇跡を感じ取った。
源次の恋文は、ついに、時を超えて、愛しき人へと届けられた。アオギリは、その役割を終え、静かに古木の姿に戻った。源次と時枝の愛は、時空を超え、永遠に生き続けるのだ。 そして、愛媛の地に、静かに、しかし力強く、その愛の物語が語り継がれていくのだった。
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- 小説のジャンル: ファンタジー
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