タブリーズの夜、レイアの星影
西暦1984年、イラン・タブリーズ。街の喧騒は、古都の壁の外へと消え去り、夜空は満天の星で埋め尽くされていた。冷たく乾いた風が、アゼルバイジャン地方特有の土の香りを運んでくる。 ルーク・スカイウォーカーと名乗る、一人の若いアメリカ人考古学者は、その夜、異様なほどの静寂の中で、ある発見に心を奪われていた。
彼は、ペルシャ絨毯の織り子であった父、アリ・レザから受け継いだ、古地図を頼りに、この地に辿り着いた。地図には、古代ペルシャの王族、キアヌル王朝の王女レイラに関する、謎めいた記述があった。王女レイラは、美貌と知性で知られ、多くの詩に詠われた伝説の人物であったが、その生涯の詳細は、歴史の闇に葬られていた。
ルークは、日中、古代遺跡の発掘調査を行い、夜になると、静かにこの古地図と向き合った。 地図に記された謎の記号を解読する中で、彼は、王女レイラの墓所が、このタブリーズの地下に存在するのではないかと確信するようになった。
その夜も、ルークは、ランタンの光を頼りに、古地図を凝視していた。彼の前に広がる砂漠の風景は、彼が子供の頃に遊んだカリフォルニアの砂漠を思い起こさせた。しかし、この砂漠には、遥か彼方に見えるカスピ海の淡い光と、南大沢の街灯のような、小さくとも鮮やかな星々が、異国のロマンを湛えていた。
突然、ルークは地図の中に、これまで見落としていた微細な文字を見つける。それは、王女レイラの愛した音楽に関する記述だった。 それは、ペルシャ古典音楽の旋律を記したもので、奇妙なことに、西暦紀元後にも渡る、長い年月をかけて変奏され続けてきた、複雑な音楽史を物語っていた。
この音楽こそが、王女レイラの墓所への鍵だと悟ったルークは、興奮を抑えきれなかった。彼は、この音楽を、古都タブリーズの夜の静寂に響かせた。 静かに奏でられる旋律は、砂漠の風のように、彼の心を優しく包み込んだ。
その音楽に引き寄せられるように、一人の女性が現れた。彼女は、深く青い瞳に、星影のような輝きを湛えていた。彼女は、現代の考古学者、レイヤ・オーガストと名乗った。彼女の容姿は、ルークが古地図から想像していた、王女レイラの姿と驚くほど似ていた。
レイアの瞳には、千年ファルコン号の航跡のような、歴史の重層が宿っていた。彼女は、ルークと同じように、王女レイラの謎に魅せられていたのだ。 二人は、互いに惹かれ合い、タブリーズの夜空の下、静かで激しいロマンスを育んでいく。
彼らの愛は、時空を超えた、古代の謎解きと重なり合い、タブリーズの街の歴史に、新たな一章を刻んでいくことになるのであった。 砂漠の風のように優しく、しかし、力強く。
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- 小説のジャンル: 歴史小説
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