飛鳥の里の仏師と転生する魂

夕焼けに染まる飛鳥の里。老いたる仏師、佐伯は税の滞納で追われる身だった。息子の甚太郎の借金返済のため、かつての仲間、彫りの深い顔をした老匠・源造と、繊細な指先の若き職人・楓と共に、秘伝の技を駆使した仏像彫刻に没頭していた。 それは、かつて佐伯が若き日に失敗した、未完に終わった「慈母観音」の修復、そして完成だった。

佐伯は、かつて傲慢さと若気の至りで、師匠の教えを無視し、邪道を歩んだ過去を持つ。その罪の意識が、彼を常に苛んでいた。そして今、その罪の代償として、息子の未来までもが危ぶまれていた。

納税期限は迫り、闇夜に潜む徴税吏の影は、佐伯の心をさらに圧迫する。 しかし、佐伯は諦めなかった。 彼の彫刻は、単なる仕事ではなく、息子の未来への祈り、そして自身の贖罪の表現だった。

ある夜、佐伯は激しい頭痛に襲われ、意識を失う。 目が覚めると、そこは飛鳥の里ではなく、見慣れない風景が広がっていた。 彼は、若い男の姿をしていた。 記憶の断片が蘇る。 彼は、かつて佐伯が師事した名工、千年の時を超えて転生したのだ。

過去の記憶を携えたまま、佐伯は新たな人生を歩むことになる。 しかし、彼の魂には、前生の宿題が残されていた。 未完の「慈母観音」、そして息子の甚太郎。 彼は、転生という新たな機会を与えられ、前生の過ちを修正し、自身の贖罪を全うできるのか？

彼の周囲には、前生で関わりのあった者たちの転生体も現れる。 源造の転生は、気さくで腕の良い大工、楓の転生は、絵画の才能を持つ若き女性… 彼らは、佐伯（転生後の姿）に導かれるように、再び仏像彫刻に携わることになる。

しかし、前生の因縁は、今生でも彼を追い詰める。 新たな敵、新たな試練が、佐伯の前に立ちはだかる。 それは、税金滞納問題をはるかに超えた、巨大な陰謀だった。

静かで激しい、最後の彫刻への挑戦。 それは、もはや単なる仏像彫刻ではなく、過去と未来、そして転生によって繋がる魂の物語だった。 佐伯は、今生において、過去の過ちを償い、息子の未来を護り、真の慈悲を刻むことができるのか。 彼の彫刻は、再び、飛鳥の里に奇跡を起こすことができるのか。

(続く…)

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  • 小説のジャンル: 転生系
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