失われた平和を求めて―メソポタミアの癒し手

第１章　粘土板に刻まれた嘆き

太陽が灼熱の砂漠を照らし、メソポタミアの地は静寂に包まれていた。かつてシュメール文明の栄光を誇った都市、ウル。その遺跡を、穏やかな表情で歩く男がいた。徳川家康。

家康は、この地に「癒し手」として潜入していた。戦国時代を駆け抜けた歴戦の武将である彼が、なぜ古代メソポタミアに？

その理由は、彼が抱く「平和」への深い探求心だった。戦乱の世で、人々の心の傷を癒す方法を模索していた家康は、歴史の奥深くに眠る、失われた平和の秘密を探し求めた。

家康は、遺跡の奥深くにある発掘現場を訪れた。発掘作業は、熱心な考古学者たちによって進められていた。家康は、彼らの調査に静かに耳を傾けながら、古代の粘土板を一つ一つ丁寧に眺めていた。

その粘土板には、楔形文字が刻まれていた。シュメール人たちの生活、思想、そして、苦悩が、時代を超えて、そこに記されていた。悲嘆に暮れる恋人たちの言葉、失われた家園への嘆き、そして、戦争の悲劇。粘土板は、人々の心の傷を、鮮烈なまでに語りかけてきた。

家康は、その言葉に耳を澄ませていた。

「この嘆き、一体何のために…？」

彼は、粘土板に刻まれた言葉の背後にある、人々の心の奥深くを探っていた。その奥には、失われた平和への、静かな願いが渦巻いていた。

家康は、古代メソポタミアの文献を丹念に調べた。そして、ある言葉に出会う。

「シュルー・ル・リク」。

それは、シュメール語で「心の平和」を意味する言葉だった。家康は、その意味に深く心を揺さぶられた。

「この言葉…、きっと、過去の平和への手がかりを隠しているはずだ。」

粘土板には、「シュルー・ル・リク」を取り戻すための儀式や、心と心の繋がりの大切さが記されていた。家族の絆、地域社会の調和、そして、神への信仰。それらは、シュメール人たちが平和を維持するために大切にしていた要素だった。

家康は、考古学者たちと協力し、シュメール時代の遺物や習慣を研究した。彼は、かつて栄えたウル市街の風情を偲びながら、人々の心の傷を癒す方法を、静かに探っていた。

そして、一つの結論に達した。それは、ただ単に過去の知恵を学ぶだけでなく、現代にも通じる「和」の精神こそが、平和を築く鍵なのではないか、という事だった。

家康は、数週間かけて粘土板から得た情報を整理した。

それは、平和を築くための、古代シュメール人の知恵だった。

そして、家康は現代に、この古代の知恵を伝えることを決意した。

（続く）

補足